去年のことですが、30年ぶりの引っ越しを控えた郊外のお宅におじゃまして、新居の収納プランをご提案する機会をいただきました。

70代のお母さまと、娘さんの、仲良し母娘さんです。

関係のよい親子さんでも、「危機」がありました。

片づけているときに、「いつか使うかも」といって、お母さまが一度捨てようと分けていた食器類を、ゴミ袋から取り出した場面があったのです。

この娘さんは、ありがたいことに、私のブログや本を、すみずみまでよく読んでくださっている方でしたので(本当にありがい限りです!)、これは仕方ないと思ったそうです。

親世代には、よくある行動だということを、わかっていただいていたので、けんかにならずにすみました。
腹を立てることもなく、また取り出したものだけで箱をつくり、一時保管箱として、目につくにくい場所に移動しました。

その後は難を逃れたのです。

お母様にしてみれば、食器棚にはスペースがあるので、もう少しとっておけると判断したようでした。親世代に8割収納という正論は通じません。

なにしろ、いかに物をしまうことができるかが、主婦の腕のみせどころだった世代です。

整理収納のスキルの価値観が違うのです。

これが、「親の壁」です。

この母娘さんに限りませんが、収納については、世代によって美意識が違います。

物が少なくて、すっきりと収まっているのが、シンプルで美しいと思う子世代。
できるだけ物がたくさんきれいに詰め込んであるのが、女性の家事力の見せ所と思う、物が少ない時代を過ごした親世代。

どちらもりっぱな「美意識」です。
この美意識がぶつかると、物を捨てる・捨てないバトルになります。

どちらが正しいということではないのです。

この母娘さんのケースでは、お母さまのほうが、全部とっておくという話になってしまうので、
片づけの手がとまってしまって、困っていました。
まさしく、美意識のつばぜり合いです。
このお母さまは、いろいろと動いてくれる娘さんにとても感謝していたのが印象的でした。

娘さんも、いいたいこを仕事だとおもって、うっとのみこみ、おおごとにならずにすみました。

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まずもって、お母さまの立場だと、本人を目の前にして、なかなか照れくさくて言えない親子さんも多いのに、偉いなあと思います。

なかなか教科書通りにはいかないものですが、お互い、リスペクトし合っている親子さんだったのです。

「共通して捨てられるもの」から手を付けることを、ご提案し、片づけモードにうまく入ることができました。

具体的には、娘さんのお兄さんが、10代のころ着ていたTシャツ類です。

まだユニクロがなくて、Tシャツが高かった時代のものです。

なにかに使えると思って、アイロンまでかけていたというのですから、驚きです。

これを、小さい頃の思い出を語りながら処分することで、けんかにならずに済みました。
亡くなったお父さまの蔵書、使わないけど捨てるのが面倒だったストーブなど、母娘が納得できるものから捨てていきました。

いくつか捨てられたことで、親子は自信をつけ、片づけのテクニックも上がり、片づけも進んできました。
ここから先は、「共通して残しておくもの」を話し合って、新居に収めるものを選んでいく方法に切り替えていきました。
ここまできたら、富士登山でいえば八合目あたりまできたという感じですね。
新居の収納も楽しみになってきました。

美意識がぶつかったら、ぜひ、「共通項探し」をして、「親の壁」を乗り越えられますよう。

(渡部亜矢)